Y.T. さんは、営業事務というオフィスワークから、IT業界に転職。未経験からSAPの専用言語を受講・習得し、ITエンジニアとして成長することができました。しっかりと目標を持ち、メモを取って復習するなど、まさに日々の努力の賜物と言えます。 Y.T. さんのように、未経験者でもエンジニアとして成長するために何が大切なのか、具体的な話を聞きました。
1990年12月、滋賀県生まれ。大学卒業後、繊維業界の卸売会社に就職し、営業事務を担当。その後、新たなキャリアを目指し、株式会社パートナーに転職。未経験からABAPを習得し、現在では貴重な戦力として新規プロジェクトに関わっている。公私の切り替えを徹底し、ライブに行くのが一番の楽しみ。
目標を持って努力すれば日々成長を実感でき、未経験でも「夢」を実現できる!
01.ITエンジニアとは、畑違いの仕事をしていた
繊維業界から、
プログラミング言語を勉強
―― パートナーに入社するまで、どのようなキャリアを経験されたのですか。
高校の時、部活動でコンピュータ部に所属し、情報処理を学んでいましたが、職業に結び付けることは特に考えていませんでした。大学では流通学部に進学し、流通業界の仕事の流れやスーパーの歴史などを学びました。卒業時、ファッション業界に興味があったので繊維業界の会社に就職。ここでは6年間、営業事務を担当しました。ただ、仕事が完全にルーチン化し、自身の成長が感じられなくなってきた。自分が成長できる業界、仕事は何なのか、真剣に考えるようになりました。
転職にあたり、なぜIT業界を選択したのかと言うと、元々パソコンに興味があり、自分が好きで、やりたい仕事があると思ったからです。それならと、IT業界に強い転職エージェントに登録。未経験の世界だったので、まずは一度じっくりと話を聞こうと面接に行きました。エージェントの方には、IT業界といっても、いろいろな仕事があることを教えてもらいました。
そして改めて、チャレンジの大切さを感じると同時に、ITの勉強をさせてもらえるプログラムがあることを知りました。エージェントの元に週に3回ほど通いながら、プログラミング言語の講習を受講し、開発とはどういうことであるのか、何がポイントとなるかなど、概要を学べました。
―― 勉強する中で、どのようなことをお感じになりましたか。
自分が高校時代に勉強していたことが、プログラムを開発していく過程で出てきたのです。昔やっていたことが役に立つんだという新たな気づきがあり、これはとても楽しかった。未経験でも、努力すればやっていけるのではないか、という感触を覚えました。
当初、IT業界のことは何も分かっていませんでした。入社したら、どのように仕事が決まるのかといった私の疑問をエージェントの方は詳しく教えてくれました。一つひとつ疑問に答えてもらう中で、徐々に不安が解消されていきました。
―― パートナーへの入社を、どのように決心されたのでしょうか。
IT業界への転職に関しては、返事待ちの企業が幾つかありましたが、パートナーは面接での対応がとても丁寧で、私の質問にも一つひとつ具体的に答えてくれ、人に優しい会社だなという印象を持ちました。未経験でもこの会社なら成長できそうな予感を強く感じ、パートナーに決めました。
02.成長する実感を求めてパートナーへ
ヘルプデスク、研修を通じて
基礎を徹底的に学ぶ
―― パートナーに入って、どのような仕事を任されたのですか。
最初は開発の仕事ではなく、ヘルプデスクの仕事に就きました。端末のトラブルなどに関する問い合わせに返答する仕事を7か月くらい担当。ヘルプデスクを通して、IT業界は裾野が広く開発業務だけではないことを知りました。パソコンの付属品やサーバーの問い合わせなどに答えていくプロセスが、OJTを通じて導入研修を受けるような形となり、業界の概要を知るために非常に良い機会でした。
その後、会社から研修を受けるよう案内がありました。まだ、やりたい言語を特に決めていなかったので、このチャンスを逃すわけにはいかないと思い、研修を受講。研修は社外で、1カ月半行われました。
ここで学んだのは、SAPシステムの開発で使われるプログラミング言語ABAP。未経験の言語でしたので、一から教えてもらいました。研修は私を含め5人で、講師からの説明だけでなく、実技をメインとした内容が組まれており、分からないところを一つひとつ潰していくことができました。
最初はABAPがどんな言語すら分からなかったので不安でしたが、勉強してできることが増えていくに従い、「これを覚えた後は、次にこう役立てよう」といった知識の連鎖が起きてきました。教えてもらったことは全て吸収しようと、集中して研修に臨みました。
1カ月半の後、別人の自分がいました。このような勉強する機会を整えてもらい、会社にはとても感謝しています。
―― 研修を終えた後、ITエンジニアとして本格的に就業されたわけですね。
翌月から、現場に入ることになりました。就業先は、上場企業のSIer。製薬会社のSAPシステムの保守開発の案件で改修(プログラムの変更)の仕事を担当しました。初日から項目追加などの対応に追われ、初めてのIT業界の仕事ということもあって、緊張したことを覚えています。
苦労したのは、「生きた言語」を扱うことが、現場では多々起こること。研修で学んだ内容が、実際はこのように変化するのかと驚きました。
実際、自分の覚えた作り方と、実際のプログラムの書き方が違ったりします。そのため、改修する場所を見つけることに苦労しました。ひたすら探すか、それでも分からない時は先輩に聞くなど、試行錯誤の日々が続きました。ただ、そうした地道な作業を重ねるに従って、徐々に慣れてきたのでしょうか。改修すべき点をすぐに見つけ、理解して対応できるようになりました。
03.営業担当のサポートが心の支えに
こまめな報連相で不安解消
―― Tさんは、努力家ですね。
言語は、自分自身がよく理解していないと知識の幅が広がりません。初めて聞いた用語、コマンドなどはすぐにメモを取り、復習するようにしていた成果が出たのかな、と思います。一つひとつしっかりと学びながら、分からない個所は聞いて、知識の質・量を積み上げていく。そういう仕事への対処の仕方は、営業事務の仕事をしていた時に培ったのかもしれません。
とはいえ、仕事にはミスがつきもの。私の場合、ミスをすると落ち込むタイプです。「何でこんなことが分からなかったのか」という気持ちになり、不安に駆られます。
―― 例えば、どういう不安でしょうか。
仕事に慣れてきた頃に、ミスが出始めて「自分はこれで成長していけるのかな」と不安になりました。特にITエンジニアの場合、自分の仕事が直接目に見える結果で出ます。自分が、どこをどう間違ったのか、それはなぜ出来なかったのかが明確に分かります。こうしたことが続くと不安になり、さらには悔しい気持ちが募ります。
思えば、営業事務をしていた頃は、このような不安はあまりなかった。自分が起こしたミスであっても、誰かにカバーしてもらえましたから。
ミスをして落ち込んだ時、「こんな調子では、続けられないかもしれない」と弱音を吐いた時があります。すると営業担当の方が、話をじっくりと聴いてくれた後、「仕事を始めてしばらくすると、誰もが不安になる時があります。まず、その不安を吐き出して、気持ちを新たにすること。そうすれば、新たな目標を持つことができます。この時期を乗り切れば、Tさんなら絶対に行けますよ」と励ましてくれました。仕事で、ここまでしてもらった経験は今までなかったことです。本当に、心の支えとなりました。
また、「今の現場は、どんな感じですか」といった連絡を、よくしてくれます。「分からないことはありませんか」「嫌なことはないですか」など、現状や問題点をヒアリングしてくれます。私の側からすると、近況報告のような感じ。何かあれば、すぐ対応してくれますので、問題が大きくなっていく事態にはなりません。電話で気軽に相談できるので、本当に助かります。
04.仕事とプライベートは、きっちり分ける
気分転換には、
ライブにいくのが一番
―― コロナ感染が広がっていますが、仕事への影響はどうですか。
去年(2020年)4月、緊急事態宣言が出た時から、完全なリモートワークとなりました。直接会うことができないので、情報共有は難しい面もあります。質問する時は、ちゃんと考えて発しなければなりません。例えば、分からないことがあっても、画面を出してお互いにそれを見ながら意見交換するようにするなど、通常より手間がかかります。しかし、目に見えて生産性が落ちるということはなく、むしろ集中できて、リモートワークの方が優れているように思います。
―― 生活の変化などはありましたか。
私は昔から、オンオフの区別はしっかりと付けるタイプ。営業事務の仕事をしていた時も、ITエンジニアになった現在も、プライベートの時間はしっかり趣味に費やしています。仕事が変わって、オフの生活スタイルが変化したというようなことはありません。現在、姉と二人暮らしですが、仕事とプライベートは分けて、メリハリを付けて生活してます。仕事は集中して取り組む一方で、終わってからは気分転換を図り、心身ともにリラックスするようにしています。
ライブに行って好きな音楽を聴きます。よく行くライブは、ロックバンドのサカナクション。男女5人編成のバンドです。残念ながら今はコロナ禍で行けないので、ネットで配信しているライブをよく聴いています。
05.未経験者へ、私なりに教えていきたい
転職するのは、
何歳になってからでも
遅くない
―― ITエンジニアとして成長していくことを、どうお考えですか。
まず、知識を増やさなくてはなりません。それができないと、仕事につながりませんから。課題としては前後のつながりを考えること。自分が作るプログラムを、お客様がどのように使って、データがどのように流れて、どう行きつくのか。その流れをしっかりと考えて対応しないと、私の一つのミスが重大なミスになったりします。自分の作ったプログラムが完璧であればいいということではなく、前後のデータのつながりをより深く知って、トータルとして対応していかなければならないと思っています。
実は今日から、別のプロジェクトに参加することになりました。これは全く新規の案件。私自身、新規のプロジェクトにスタートから参加するのは初めての経験です。上流工程やプロジェクトマネジメントなども含め、ここでいろいろなことを知り、知識を吸収したいです。
―― 今後のキャリアとして、何か考えていることはありますか。
後輩を育てられるようなITエンジニアになりたいです。IT業界の場合、未経験から入ってくる人がいますので、やっていけるかどうか、不安に思う人が少なくありません。実際、私も同じ経験をしています。だからこそ、その部分に対する共感がありますし、私なりのサポートができるように思います。私と同じような悩みを持っている人に対して、フォローできるのではないかと考えています。
―― IT業界では、女性で未経験で入ってくる方が多いのでしょうか。
多いですね。私の場合、転職するのが少し遅かったので正直、年齢的な不安がありました。それでも何とかやっていけているので、その点は安心してもいいように思います。今の時代、転職するのは何歳からでも遅くはないです。女性だからと言って、IT業界に転職するのは特別なことではありません。業界自体が大きく成長しており、何より学びが自分の成長につながります。
―― なるほど。ITエンジニアの世界は、キャリアの伸びシロがどんどんと広がっているという感じがします。
プログラムを作るというのは、本当に責任のある仕事だと思います。そして、成長実感を感じます。そのためにも、日々やりがいを持って仕事に当たることがとても大切です。
それと、こういう時期だからこそ、情報の共有が大事だと思っています。技術もそうですし、今どんなことをしているのかといった現場の情報です。そして、別の技術分野や異なる言語のエンジニアとも話をしたいです。コロナが明けたら、ぜひ皆でいろいろな共有をしたいですね。
まだまだ未熟ですが、私なりの経験を活かして、人の面倒を見たり、フォローできるようなITエンジニアになりたい。そうすることで、相手が何を考えているのかを感じ取る力であったり、自分のコミュニケーション能力の向上につながれば、さらにいいなと思います。
―― パートナーは皆さん仲がいいし、そうしたことが自然発生的にできるような組織風土ですね。 Y.T. さんには、今度は教える立場としての活躍を期待します。
インタビューを終えて
●「夢」を実現するためには、何歳になってもチャレンジと努力が大切●
Y.T. さんは、30歳を前にして、それまでのオフィスワークとは全く違うITエンジニアの世界にチャレンジしました。「夢」の実現に向けて、成長に対する強い意欲、何より日々の努力に対して、頭が下がります。 Y.T. さんのような人の集まるITエンジニア集団が、これからの日本のシステムを支えていくことを切に願います。いきいきと働くには、仕事だけでなく、オンオフの切り替えが大切なことを、改めて感じました。
福田敦之
人材マネジメント分野を中心に、ライター として取材活動を行いながら、人事・教育関連の主要専門誌やWebサイトへと執筆。他方、ベンチャー企業 に対する人事・教育コンサルティング、人事制度設計・導入、大学等での講師を歴任している。